【金 賞】・・・・・「"LOVE!自転車"大作戦」 角 谷 千 飛 路 札幌市
ぼくの住む北海道では、春先に信じられない光景を目にする。
道路脇の残雪の山が低まり、ネコヤナギの銀色の芽がつやめく気配。うららかな春の日差しが心地良い。雪の割れ目からはふきのとうが顔を出している。
同時に、雪に埋もれていた自転車も顔を出す。駅前の路上や駐輪場に放置されていた自転車が、春の訪れと共に顔を出す。
春の風物詩… ではない! 何百台もの自転車が放置され、まるで"越冬キャベツ"のように、雪の中で冬を越したのである。キャベツと違って、自転車は熟成されない。錆びるだけである。
「どうして、こんなにたくさんの自転車が放置されているのだろう…」ぼくは涙が出るほど悲しくなり、胸が痛んだ。
自転車は、ぼくの掛け替えのない宝物。みんなが自分の自転車を愛していれば、放置自転車は減るはずである。乗り捨てなんてしないだろうし、盗まれないように細心の注意を払うと思う。 『"LOVE!自転車"大作戦』
最悪のマナーである放置自転車撲滅のためにまずは身近な友達から、この輪を広げていく。自転車のことを知らずして、自転車は愛せない。知れば知るほど愛おしくなる。
チェーンのはずれ、パンク、虫ゴム交換…不具合に直面しても「ぼくと一緒に直そう。」と、友達みんなに徹底した。ぼくの家にある部品は惜しみなく提供した。パンクは無料で、チューブ交換など部品が必要な場合は、部品代の実費で修理した。
ぼくに付いたあだ名は"チャリンコ屋"。実は、けっこう気に入っている。
北海道は半年間、雪に埋もれる。自転車は物置の中でほこりをかぶる。ぼくは、自転車を拭きながら、「春になったら思いきり走ろうね。」と会話している。
雪道でも自転車に乗る人はいる。人それぞれ事情があると思う。けれどもぼくは乗らない。雪道は、歩道と車道の区別がなくなる。そればかりか車道のセンターラインもない。普段は二車線の車道も、車がすれ違うのも困難なほど、狭くなってしまう。スケートリンクの様なアイスバーンや圧雪路では、転んだときに、歩行者を巻きこんだり、車に接触したり、"自分だけ"の被害では済まなくなってしまう。自分が被害者にも加害者にもなりうる危険性が高い。塩化カリウムがたっぷりと含まれた融雪剤が散布された雪道では、自転車もかわいそうである。
雪道での"自転車走行禁止"というルールはない。しかし、ルールで決められたこと以外でも守るべきマナーはたくさんある。特に雪国では、一人のマナー違反が重大事故につながりかねない。心の底から自転車を愛していれば、マナーは自然に身に付くと思う。
"LOVE!自転車"ぼくは、北の空からこの思いを、全世界に発信し続けていく。