【金 賞】・・・・・おばあちゃんの自転車 上 野 開 登 鹿児島市
ある日、いつも元気なおばあちゃんからしょんぼりとした声で電話がかかってきました。買い物が終わり、自転車おき場へ行ったらおばあちゃんの自転車がなくなっていたのです。
おばあちゃんが一生けん命さがしているすがたがぼくの頭にうかびました。ちょっとさびついた赤い自転車。ペタルをこぐと「ギーコ、ギーコ」とへんな音がします。みんなからみればただの自転車かもしれません。けれどおばあちゃんにとっては大切な宝物なのです。それはなくなったおじいちゃんが買ってくれたのもあるけれど、なんといっても車のめんきょをもたないおばあちゃんが毎朝四時に家を出てパートにいくためには自転車が一番たよりになるからです。
「おばあちゃん。きっと見つかるよ。」、「そうだったらうれしいんだけどね。」はげまそうと思って、いつもより大きな声を出しました。
ぼくは小さいころ、よく後ろのかごにすわらされて、おばあちゃんの買い物につきあっていたそうです。自転車が「ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン」とゆれるのが楽しくてなかなかおりようとしないでこまらせてしまったり、かごをぎゅっとにぎったままねむってしまったこともあるそうです。今ではちょっとてれくさい気もするけれどぼくにとっても思い出がたくさんつまっている自転車なのです。
それから二週間ほどして、おばあちゃんのいつもの明るい声の電話がありました。
「今ね、自転車が見つかったんだよ。これからとりに行ってくるからね。もう心配しないでいいからね。」やっぱりおばあちゃんには、明るい声が一番あっていると思いました。ちょっとあきらめいていたぼくの心も明るくなりました。自転車はカラオケ店の前においてあったそうです。お店の方が気になって電話をかけてくださったらしいです。
「おばあちゃん。見つかってよかったね。自転車は大じょうぶだった。きずはついてなかったの。名前と電話番号を書いていてよかったね。こんどはもっとがんじょうなかぎをかけるといいよ。」ぼくとおばあちゃんで話し合いました。
パートから帰ってきたおばあちゃんはいつもうれしそうに外の様子を教えてくれます。「今日の雨はね。風も強くてなかなか前に進めなくて、自転車をおしながらいったんだよ。」、「開登。今日は月がとってもきれいだったよ。星もたくさん見えたよ。」毎朝早くてたいへんだけれど、元気に自転車に乗っているおばあちゃんがぼくは大すきです。